少女の平凡な日常【女生徒 感想とあらすじ】

読書

みなさんこんにちは、卯月です。

今回おすすめをする小説は太宰治さんの「女生徒」です。

以前ご紹介をした「人間失格」の作者でもあり、思春期の少女の多感な心情は読みごたえがあります。

それでは、さっそくご紹介をしたいと思います。

感想

ある女生徒の日記

この作品は女性読者から送られてきた日記をもとに書かれて作品で、主人公の少女の心情が一日の日記のような文体で描かれているのが特徴です。

まるで生きている少女のような文体

思春期には誰もが抱くようなもどかしさや、日常生活の中で考えている事や感じた事を心の中で吐露しているような文体にはリアリティーがあり、それがこの作品の最大の魅力でもあると思います。

また、話が突然切り替わり、次の瞬間には全く違う事を考えていたりする思考の切り替わり方や、その時の感情に思考が左右されるところが巧妙に描かれており、そこにもリアルさがあり面白いと感じました。

大人でなく、子供でもなく

大人と子供の狭間にいる主人公と同じくらいの年齢の人達は皆、心のどこかに繊細で柔らかな部分があり、そんな繊細な自分をどうにかしたいけれど上手くいかずもどかしく思う主人公の姿には共感できる部分も多いのではないかと思いました。

この女生徒という作品は、主人公と同じくらいの年齢の人達は勿論、そうでない人達も自分と重なる部分を懐かしく思い、共感出来る作品だと思います。

おススメしたい人

  • 太宰治の作品が好きな人
    • 他の太宰治作品とは違い、柔らかな文体で書かれており新たな一面が楽しめます
  • 主人公に共感したい人
    • 特に若い女性には共感できる部分が多いかもしれません
  • リアルな物語が読みたい人
    • 本当に思春期の少女が書いたようなリアルな文章が楽しめます
  • 純文学に興味がある人
    • 柔らかな文体で書かれている作品なので純文学に堅苦しいイメージのある方にもおすすめ

あらすじ

彼女の朝、抱える想い

物語は主人公の少女が朝、目を覚ますところから始まる。主人公は朝になると悲しいことが沢山胸に浮かび、いろいろな醜い後悔が胸を塞いで身悶えしていた。そして、ふと亡くなった父の事や別れた人、長い間会わずにいる人達の事をいやに身近に思い出し、懐かしく思う。

身支度を済ませて廊下に出ると、母が誰かの縁談の準備で忙しそうにしていた。主人公は朝から騒々しい母に苛立ちを覚えると同時に、父が亡くなってからの母の苦労を思い心の片隅で微かに同情の念を抱いた。

やがて学校へ行くために家を出た主人公は、通学中に見る景色や電車に乗っている時に読んだ雑誌の内容の事などをとりとめもなく考える。その後、主人公は学校で真面目に勉強し、放課後は友人と遊んでから家に帰った。

彼女の夜、作り笑顔

家に帰るとお客さんが来ており、母の甲高い笑い声が聞こえてきた。相手の機嫌をとるために面白くもない話に笑って媚びている母を見るのが主人公は嫌でたまらなかったが、その一方で、数年前に亡くなった父の代わりに働き、一人で頑張っている母に優しくしなければとも思っていた。

そして主人公はお客様夫妻の夕食を作り、持っていくとしつこいお世辞を言われ苛々としたが、無理に笑ってやり過ごし、夕食が済むとすぐに台所へと引っ込んだ。夕食の片付けをしながら人付き合いとは、嫌でも我慢して愛想良くする方が良いのか、人に悪く言われても自分を見失わず韜晦しないで行く方、どちらが良いのかと考えてみたが結局、答えは出なかった。

その後、夫妻は用事があると言って母を連れて出かけて行った。今井田夫妻が何かと母を利用するのは今回だけではなかったが、今井田夫妻の厚かましさが嫌で一人でぼんやりと夕闇の道を眺めていた主人公は泣きたい気持ちになった。

彼女の明日、母の強さ

しばらくして母が帰って来ると肩を揉んでほしいと言ってきたので揉んであげると、母の疲れが自身の体にも伝わってくるほどよく分かり、母も父が亡くなってから世間から馬鹿にされまいと努めているのだろうと思うと同時に、母の事を少しでも恨んでしまった自分を恥ずかしく思った。

母と二人で過ごす夜は久しぶりだったので、嬉しくて自然と笑ってしまう主人公は先に布団に入った母といろいろな話をした。そして自身も布団に入り、明日と幸福について考えながら眠りについた。

最後に

いかがでしたか?

太宰治さんといえば「人間失格」のインパクトが強い作家さんですが、今回ご紹介をさせて頂いた「女生徒」のような繊細さや柔らかさのある文章も魅力的です。

彼の作品が今でも多くの人を魅了する理由もわかるような気がしますね。

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