喜びも悲しみも知らない姫君の生涯【六の宮の姫君 感想とあらすじ】

読書

みなさんこんにちは、卯月です。

今回おすすめをする作品は芥川龍之介さんの「六の宮の姫君」です。

前回ご紹介をした「トロッコ」の作者でもあり、古典を題材に描かれた作品です。 それではさっそくご紹介していきます。

感想

流されるまま生きていく

この作品は、喜びも悲しみも知らない姫君の流されるがままに生きた生涯を描いた作品です。

多くの文学作品では主人公の感情の動きが細かく描かれていますが、この作品では主人公の感情の動きがほとんど描かれていません。

この作品を読んだ人は、ただ流されるがままに生きた姫君に対して好意的な印象を持てない人がほとんどだと思います。

しかし、物語をよく読み込んでみると、姫君は暮らしていくための努力は完全に放棄していたわけではないことが分かります。

現代の女性、千年前の女性

当時の女性が経済的な安定を得るためには男性を頼るほか選択肢がなく、暮らしを助けるために不本意ながらも貴族の男と会うようになったのは、姫君の精一杯の努力だと思います。

千年前の価値観や、当時の女性ができた処世術など、時代背景を考えると姫君の生き方は仕方がない部分もありますが、生き延びるための覚悟や意欲が持てなかったのは姫君の弱さだと思います。

おススメしたい人

  • 芥川龍之介の作品が好きな人
    • 「トロッコ」とはまた違う哀愁や魅力にあふれた作品が楽しめます
  • 短編小説が好きな人
    • 短い作品だからこそ手軽に読むことが出来ます
  • 源氏物語が好きな人
    • 作品の雰囲気が源氏物語と似ているため
  • 哲学が好きな人
    • 姫君の生き方にはいろいろと考えさせられることが多いため
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あらすじ

六の宮の姫君

平安時代、京に住む六の宮の姫君は、両親から寵愛され何不自由なく育った。

しかし、姫君が大人びた美しさを備え始めた頃、相次いで両親がなくなり、乳母の他に頼るものが何もない姫君は途方に暮れた。

暮らしが苦しいことは姫君にも分かっていたが、それをどうすることもできず毎日、琴を引いたり、歌を詠んだりを繰り返していた。

貴族の男を頼るが……

ある秋の夕暮れ、姫君はある貴族の男と合ってみないか、と乳母に勧められる。

暮らしを助けるためにやむを得ないことだと思いつつも嘆き悲しんでいた姫君だが、いつの間にか夜ごと男と会うようになり、暮らしも少しずつ豊かになっていった。

しかし、父親の赴任にともない地方へ行くことになった男は姫君に別れを告げ、五年後に戻ると言い京を去った。

姫君はたとえ恋しいとは思えなくとも、頼みにしていた男との別れに泣き伏した。

しかし、五年が過ぎても男は帰ってこず、任地で新しい妻を迎えていた。

姫の最期

その後、姫君の暮らしは困窮し、乳母は新しい男を迎えるよう勧めるが、姫君は聞き入れようとしなかった。

やがて九年が経ち、京へと帰ってきた男は姫君を探して歩き回るが、朱雀門の前の曲殿でようやく見つけ出した姫君は病気になり、乳母に介抱されていた。

姫君は男を見るなり筵の上にうつ伏して倒れたので、乳母は近くにいた法師のもとへ走り寄り、臨終の姫君のために経を読んでくれと頼んだ。

法師は姫君の枕元へ行き、念仏を唱えるよういうが、姫君は夢現に火の燃える車や、金色の蓮華が見えると呟くばかりで、念仏を唱えることなくこの世を去る。

極楽にも地獄にも行けぬ

それから何日か後の月夜、姫君に念仏を勧めた法師が朱雀門の前の曲殿にいた。

そこへ一人の侍がやってきて、朱雀門のほとりで女の泣き声がするという噂を法師に尋ねた。

すると、突然どこからか女の泣き声が聞こえてきたので法師は、あれは極楽も地獄も知らない不甲斐ない女の魂なので御仏を念じてやりなさい、と侍に声をかけた。

しかし、侍は返事をせず、月光に照らし出された法師の顔を見るなり両手を地面についた。

法師は高名な僧侶だった。

最後に

いかがでしたか?

姫君の生き方にはいろいろと考えさせられます。

喜びも悲しみも知らない人生というのは苦渋に満ちた人生よりも多くの未練を残すのかもしれませんね。

みなさんは姫君の生き方についてどう思いましたか?

ここまで読んでくださりありがとうございました。 次回もお会いできることを楽しみにしています。

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