あなたの周りに、魔女はいますか?
みなさんこんにちは、卯月です。
今回おすすめをする小説は梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」です。
以前映画化もされている作品なので、名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
こちらは梨木さんのデビュー作です。
梨木さんは私の好きな作家さんの一人で、他にも素敵な作品があるので是非また紹介をしたいと考えています!
「西の魔女が死んだ」の感想
祖母の魔法
周囲に上手く溶け込むことが出来ず、不登校になった主人公の”まい”は、祖母の元へ預けられることになり、祖母から魔女になるための修行を受けることになります。
ここでいう魔女修業とは、昔話に出てくるような便利な魔法が使えるようになることではなく、自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる意志の力を高める事です。
当初の主人公は、目の前の問題から逃げようとする消極的な姿勢が目立ちましたが、祖母と共に過ごし、魔女修行を受けていく中で、自分で決めることの大切さを教わった主人公は、精神的に成長し、迷いながらも新たな道を自分の意志で決めました。
そして、魔女になる
魔女修行を通して主人公の成長を描いているところは、この物語の一番の見所です。
この物語では、変わりたいけれど変われない、という思いや、変わろうとする意思を魔女や魔法という表現を用いて描かれています。
また、魔女修行とは、後悔の少ない人生を送るために必要な力を身に付けるための修行でもあると感じました。
弱い自分と向き合い戦う力や、幸せに自分らしく生きる力は、後悔の少ない人生を送るために必要不可欠なものです。
それらを身に付けることが「魔女になる」ということだと思いました。
私の魔女修行
作中で特に心に残った言葉が一つあります。
それは、「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」という言葉です。
苦手な事から逃げるのは悪いことだ、という考え方が世間一般的で、親や学校からも苦手な事でも努力して続ける事が大事だと教えられ、努力する方が喜ばれます。
しかし、この言葉で、こういう考え方もあるのか、と思い、私は前よりも息がしやすくなり、楽になりました。
読んで欲しい人
- 本を読んで感動したい人
- 二人の約束が果たされるクライマックスは必見
- 今、悩みを抱えている人
- 魔女の言葉は生きていく上でのヒントになるでしょう
- 読書を通じて息抜きをしたい人
- 安心して読める心温まる優しい物語
- 大好きな家族と喧嘩をしてしまった人
- 大好きな気持ちを取り戻すきっかけに
「西の魔女が死んだ」はどんな話? あらすじを紹介!
西の魔女
ある日、いつものように学校へ行っていた主人公のまいは、祖母が倒れたことを知らされ、迎えに来た母の車の中で祖母のことを「西の魔女」と呼ぶようになった二年前の、あの一ヶ月余りのことを思い出していた。
魔女修行のはじまり
二年前の五月、中学校に入ったばかりのまいは、周囲に上手く溶け込むことが出来ず、不登校になり、田舎に住む英国人の祖母の元へ預けられることになった。
まいは小さい頃から祖母が大好きで、事あるごとに「おばあちゃん、大好き」と言っていた。そういう時、祖母は、いつも微笑みながら「アイ・ノウ」と応えていた。
数日後、祖母の家に預けられたまいは、時折ホームシックに襲われながらも祖母の優しさに救われながら新しい生活に慣れていった。
ある日、祖母から魔女を知っているか、と聞かれたまいは、祖母が魔女だということを知る。
魔女になるために一番大切なのは、意志の力。自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力、だと聞いたまいは、意志の弱い自分に不安を抱きつつも、魔女になるための修行を受けることを決意する。
西の魔女との約束
祖母の家に来てから三週間ほどたったある朝、卵を採りに鶏小屋へ向かったまいは、何者かによって鶏が殺されているのを目撃した。
その光景を見たまいは、動揺し、ショックを受けた。その日の晩、まいは祖母と一緒に眠りたいといった。
布団に入ると祖母がおやすみをいう前に急いで話しかけ、人は死んだらどうなるの、と問いかけた。死んだらどうなるかは祖母にも分からなかったが、祖母の信じている死後のことを話してくれた。
死ぬ、ということは身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になることだと。
その後も祖母と長い間話をした後、まいは眠りについた。
次の日の朝、目を覚ましたまいは祖母の元へ行き朝食を食べながら色々な話をしていると、ふと、祖母が言ったことをきっかけにある約束をした。
ある日、祖母の家にまいの父親がやってきた。仕事の都合もあり、転校することを提案されたまいは、迷いながらも自分の意志で転校することを選び、新しい場所で生きていく決意をした。
西の魔女との別れ
ある日の朝、まいは自身の畑を作るために祖母からもらった土地まで出かけた。
その場所はまいのお気に入りの場所で、自身の聖域と言っても過言ではないくらい大切な場所だった。
そこで、ゲンジという男に出会った。
いつも横暴な態度のゲンジにまいは嫌悪感を抱いていた。くわを持っているゲンジを見たまいは、自身の土地を侵しているようにしか見えず、憎悪を感じてゲンジをにらみつけるとその場を走り去った。
血相を変えて祖母の家に戻って来たまいは、今しがたの出来事を祖母に話したが、祖母はまいのことをたしなめるだけでまいの気持ちを分かってくれず、わだかまりを抱えたまいは祖母と仲違いをしてしまう。
いつもと同じように接しようとしても上手くいかず、ついにまいが祖母の家を去る日が来た。
迎えに来た母の車に乗って、祖母にさようならを言うとき、祖母は心配そうな、悲しそうな顔でまいを見つめていた。
いつものように「おばあちゃん、大好き」と言ってほしいのだと気付いたが、まいは言う事が出来ず、車が発進し、祖母の姿が見えなくなってもまだ、祖母の訴えるような視線を感じていた。
魔法のような約束
あれから二年がたった今、まいは毎日学校に通い、新しい友達も出来た。
祖母のことを思うといつも胸が痛んだが、今度、祖母に会った時は少しでも祖母を喜ばせられるように、あらゆることに粘り強く取り組んできたが、祖母の家へは結局、あれから一度も行かなかった。
祖母の家に着くと、急いで車から出て、玄関に入ると、祖母の部屋へ向かった。
布団に寝かされた祖母を見たまいは、悲痛な思いが込み上げてきた。
やがて、台所のドアの間に来たまいは、そこに腰をかがめ、何気なく汚れたガラスに目を向けると、そこには、指か何かでなぞったような跡で文字が書かれていた。
それを見たまいは、祖母はあの約束を覚えていたのだと涙を流し、思わず「おばあちゃん、大好き」と叫んだ。
その時、まいが心の底から聞きたいと願う声が確かに聞こえた。
最後に
いかがでしたか?
「西の魔女が死んだ」の中で祖母は魔女修行と称して、まいにたくさんのことを教えてくれます。
そして、その魔女修行はまいだけではなく、読者である私たちのことも素敵な魔女に導いてくれます。
今、あなたが息苦しさを感じながら生きているのなら、西の魔女と共に魔女修行を始めてみてはいかがでしょうか。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
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