誰が一番偉いのか【どんぐりと山猫 感想とあらすじ】

読書

みなさんこんにちは、卯月です。

今回は宮沢賢治さんのどんぐりと山猫を紹介したいと思います。

以前ご紹介をした「注文の多い料理店」の作者でもあり、今回ご紹介する作品もユーモアに溢れた大人でも楽しめる作品です。

宮沢賢治さんの独特な世界観やオノマトペをぜひ楽しんでください。

感想

不思議な裁判

この作品は、主人公の一郎が山猫から葉書を貰い出席した裁判で争いごとを解決する物語ですが、ファンタジーの要素もある作品です。

作中で主人公は面倒な裁判を終わらせることに成功しましたがその後、山猫からの葉書が来ることはありませんでした。

二度と葉書が来なかった理由は主人公が葉書に「出頭すべし」と書く事を断り、山猫の配下に入らなかったからだと思います。

一番“偉い”者は誰だったのか

山猫は主人公に感謝していましたが、同時に賢い一郎に対して危機感を抱いていたと思います。

山猫が三日かけても終わらせることが出来なかったどんぐりたちの争いごとをあっという間に解決してしまった主人公は山猫の立場を脅かす存在になり、危機感を抱いた山猫は自身の配下に入るように誘い込みますが上手くいかず、自身の立場を脅かす存在を取り除くために主人公に二度と葉書を出さなかったんだと思います。

また、本作の登場人物は主人公以外皆、「偉い」ということにこだわりがありますが、これは「偉い」ということにこだわらないことの難しさや、一郎とそれ以外の登場人物たちの対比を強調する為の演出でもあると思います。

おススメしたい人

  • 宮沢賢治に興味がある人
    • 農学校の教師を目指していた彼の教育精神や思考を知る事が出来る
  • 短編小説が読みたい人
    • 難しい言葉の少ない短い話のため、忙しい人でも手軽に読むことが出来る
  • 子供に童話を読ませたい人
    • 動物やどんぐりなど子供が好きそうなものが出てきて興味が出るため
  • 宮沢賢治の作品が好きな人
    • 作品の世界観や独特のオノマトペなど、宮沢賢治の作品の良さが詰まっているため
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あらすじ

山猫からの葉書

ある秋の土曜日の夕方、主人公の一郎のもとにおかしな葉書が届く。面倒な裁判があるので出席してほしいという内容で差出人は山猫からだった。

葉書に書かれた文字は下手で文章は間違いだらけだったが一郎は嬉しくてたまらず夜遅くまで眠れなかった。

いざ、裁判へ

翌朝、一郎が目を覚ますと辺りはすっかり明るくなっており、早速山猫を探しに山へと出掛ける。

途中で出会った栗の木や笛ふきの滝、白いきのこの楽隊や栗鼠などに山猫の事を尋ねながら歩いていると、谷川の南の方に真っ黒な榧の木の森があり、森の方へと続く新しい小さな道があるのを発見した一郎はその道を上って行く。

道は急な坂になっており、汗をかきながら坂を上り切ると、そこには美しい黄金色の草地が広がっていた。

その草地の真ん中に背の低い奇妙な姿をした男が膝を曲げて手に鞭を持ちながら一郎の方を見ていた。一郎はそばへ行き、山猫の事を尋ねると男は山猫の馬車別当だと言い、さらに葉書を書いたのは自分だと告げた。

一郎が馬車別当と話していると急に強い風が吹き、馬車別当は丁寧なお辞儀をした。振り返って見てみると、そこには山猫が立っていた。

どんぐりの背比べ

やがてどんぐりたちが集まって来たので馬車別当がベルを鳴らすと遂に裁判が始まった。

裁判の内容は「どんぐりたちの中で誰が一番偉いか」という内容で、どんぐりたちは皆、自分が一番偉いと主張しているため収拾がつかずこの裁判も三日目だという。

山猫が和解を提案しても聞く耳を持たず、馬車別当が鞭を鳴らすとやっと静まった。

山猫が一郎にどうしたらいいかとそっと耳打ちをすると、一郎は笑って「このなかでいちばんばかで、めちゃくちゃで、まるでなっていないようなのが、いちばんえらい」という説教で聞いた話を山猫に教えた。

山猫は一郎から聞いた話をそのままどんぐりたちに言い渡すと、どんぐりたちは静かになりあっという間に争いごとが解決した。

見事な手腕、しかし……

そして、一郎に感謝した山猫は名誉判事という称号を与え、今後も裁判に来て欲しいと言った。

快く引き受けた一郎に山猫は葉書の文面に出頭すべしと書いていいかと尋ねる。

しかし、何だか変な感じがした一郎が否定するといかにも残念だという風に下を向いていたが、いままでのとおりにしましょうと言うと謝礼は黄金のどんぐり一升と塩鮭の頭どちらが良いかと尋ねてきたので黄金のどんぐりを選んだ。

そして、山猫の用意したきのこの馬車に乗り馬車が走り出すとどんぐりは次第に光を失っていき、馬車が止まったときには普通の茶色いどんぐりに変わっていた。

そして、山猫も馬車別当もきのこの馬車も消え、一郎は自分の家の前に立っていた。

それから二度と山猫からの葉書が来ることはなかった。

最後に

いかがでしたか?

このお話を読み、結局一番偉かった者は誰だったと感じるでしょうか。

そのように考えてしまう時点で、どんぐりたちとあまり変わらないのかもしれませんね。

みなさんは“偉い”ことは大切だと思いますか?それとも、もっと大切なものが他にもあると思いますか?

ここまで読んでくださりありがとうございました。

次回もお会いできることを楽しみにしています。

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